舞台はフィリピン中部、レイテ島北東部の海岸に面した都市タクロバン。2013年11月、台風ヨランダの直撃で甚大な被害を受け、6000人を超える死者が出た町である。台風のあとも商店の襲撃や救援物資の略奪が相次いだため、ベニグノ・アキノ大統領が非常事態宣言を出したことでも知られる。本作はタクロバンの被災地に住む3人、べべス、ラリー、アーウィンの厳しい日常を追う。べべス役のノラ・オーノールは『汝が子宮』、ラリー役のフリオ・ディアスは『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』『サービス』と、いずれもメンドーサ組の常連俳優で、被災地の人々の心のありようをしっかりと見据えた演技が光る。当初フィリピン政府の環境天然資源省からドキュメンタリー作りを依頼されたメンドーサは、劇映画にしてはどうかと逆に提案したうえで本作の完成にこぎ着けた。しかしドキュメンタリーと見紛うようなリアリティをそなえている点が大きな特徴である。カンヌ映画祭2015「ある視点」部門スペシャル・メンション。