ポル・ポト率いるクメール・ルージュによって弾圧されるまでのカンボジアのポピュラー音楽史を1950年代から70年代まで辿った貴重な音楽ドキュメンタリー。生存者へのインタビューや、知られざるアーカイブ映像から失われた歴史が甦る。インタビューの中心は、カンボジア初のバンドといわれる「バクセイ・チャムクロン」のギタリスト、モル・カニョル、男性4人組「ドラッカー」のトゥーチ・タナ。また、シン・シサモット、ロ・セレイソティアといった伝説の大歌手たちの姿に圧倒される。監督のジョン・ピロジーはNYを拠点に活動するアメリカ人。近年、デイヴィ・シュー監督『ゴールデン・スランバーズ』(東京国際映画祭2012出品作)やソト・クォ―リーカー監督『シアター・プノンペン』(東京国際映画祭2014国際交流基金アジアセンター特別賞)などカンボジア映画史をひも解く作品が登場しているが、カンボジア音楽史をたどる本作もそうした動向とリンクするものといえよう。