亡き父の遺言により、広大なアヒル農場を相続することになったジュン。生前の父親と疎遠で都会暮らしをしていた彼は、農場の売却を視野に入れて久しぶりに帰郷する。家畜や雄大な自然、あるいは農場に長年暮らす使用人一家と接するなかで、ジュンの心は徐々に揺れはじめるが、都会で彼の帰りを待っている恋人のことも忘れられない…。タイトルにある「バロット」とは、孵化しかけたアヒルの卵を茹でて食べるフィリピンのソウルフードのことで、根なし草の主人公が農場の大地に根ざした生活を選ぶかどうか、という本作のテーマが凝縮されている。ポール・サンタ・アナ監督は本作が4本目となる俊英だが、『クリスマス・イブ』(東京国際映画祭2011最優秀アジア映画賞)の脚本家として知られ、本作でも自ら脚本を執筆している。またブリランテ・メンドーサがエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。シナグ・マニラ映画祭2015出品。