アンコール遺跡群に近いカンボジア北西部のシェムリアップ。本作のタイトルの「川」は、この都市の南にあるトンレサップ湖から流れ出て南下し、首都プノンペン付近でメコン川に合流するトンレサップ川をさしている。タイトルのとおり5~11月の雨季に逆流することで知られ、カンボジア人にとって「生と死」「創造と破壊」の象徴的な存在となっている。本作は伝統的な生活を送る3人の人物に焦点を当て、食生活と生活環境を見据えたドキュメンタリーである。河畔の漁村に暮らす14歳のムスリムの少年サリ・マッは学校を辞め父親を助けて漁に出るが、近年の乱獲がたたって十分な漁獲量を得られない。プノンペン郊外の農村に住むキィウ・モックは稲作で生計を立てているが、不作続きで土地や水牛を売り借金も膨らんでいる。そしてサイ・サムウーンは北東部の密林地帯で森とともに生きてきたが、大企業の森林伐採で環境が一変してしまう。女性監督Kalyanee Mamはクメール・ルージュ支配下の1979年に生まれ、家族とともにアメリカに逃れた。イラク難民を扱った短編ののち、本作が長編ドキュメンタリー第1作となった。サンダンス映画祭2013でWorld Cinema Grand Jury Prizeを受賞。『川に生きる』のタイトルで世界自然・野生生物映像祭(2016)で上映された。